日本政治学会若手論文優秀賞について
日本政治学会は、若手会員の研究活動を奨励し顕彰するとともに、学会を通じた研究活動をさらに活性化するために、「日本政治学会若手論文優秀賞」を設けています(日本政治学会若手論文優秀賞規程第1条)。
最新の受賞作(2点)
- 小林卓人「政治的能力の欠如はなぜ問題なのか――関係的平等説による評価と解決策の提示」
(選評)
しばしば市民・有権者の政治的能力の欠如が指摘され、そのことは民主主義にとって問題であるとされる。しかし、それがなぜ問題であるかの理由は、必ずしも明らかにされていない。本論文はその理由の説明として、「道具的見解」と「非道具的見解」を取り上げ、前者の不十分性を指摘した上で、後者の意義を論じる。すなわち、本論文は関係的平等説に依拠して、政治的能力の欠如は平等な政治的影響行使の機会の実質的な保障を損なうがゆえに問題だとする。
このような本論文は、市民・有権者の政治的能力をどう見るかという、広く政治学研究者の関心を惹く問題について、政治哲学の研究動向を十分に踏まえた明快な議論を展開した点で評価できる。また、その際に、近年注目されているエピストクラシー論に対抗して、関係的平等説の立場からそれでもデモクラシーが擁護されるべき理由を提示しようとする点に、本論文の意欲と挑戦性を見て取ることができる。
- 柳至「公共施設統廃合の受容――ビネット実験による検証」
(選評)
人口減少が進む日本において、既存の公共施設の統廃合は極めて重要な政治的課題となっている。それでは、政府がどのように統廃合の決定を行えば、市民にとって受け容れられるものになるのだろうか。本論文では、決定までの手続きを、市民が公正であると考えるかどうかという点に注目してサーベイ実験を行い、市民が関与することが、市民の公正認知を高めて統廃合という困難な決定の受容につながることを論じるものである。
現代の重要な実践的課題を扱う本論文は、社会的公正についての理論的・実証的な研究を踏まえて仮説を設定し、公民館の統廃合を対象として丁寧に設計されたビネット実験によって検証を行っている。科学研究として標準的な手続きを満たしたうえで、理論と接合しながら今後の市民の意見表明の制度設計について興味深い含意を提供することができている。現実への含意と方法論的配慮という論文として重要な要素をともに満たす優れた論文と言える。
若手論文優秀賞選考委員長 野口雅弘
