理事長挨拶

理事長 高安 健将

 日本政治学会は1948年11月5日に設立されました。初代の理事長である南原繁は「永久平和の実現と文化国家の建設」をその理念として掲げています。創設以来75年以上が経過し、その間に政治学者の問題意識や研究方法は変化し、政治学を囲む社会の状況も大きく変わりました。しかしながら、政治学の営みを通じて、平和とデモクラシーの実現に寄与し、世界の学術と文化の発展に貢献したいという思いは変わることがありません。
 現代は、事実や論理、協調と希望よりも、情念と激情、不信と怒り、嘲弄と嘘、不安と無力感が溢れる世界となっています。気候変動や自然災害も社会への重大な脅威です。私たちの政治社会がどこへ向かおうとしているのか、そのことから研究者が目を背けることはできません。現実政治に対する禁欲的な観察という場合にもなお、政治学は方向感覚を求められる学問分野なのかもしれません。

 日本政治学会規約の第3条には、「本会はひろく政治学(政治学、政治学史、政治史、外交史、国際政治学、行政学及びこれに関連ある諸部門を含む)に関する研究及びその研究者相互の協力を促進し、かねて外国の学会との連絡を図ることを目的とする」と規定されています。政治学は近年、専門分化もいっそう進み、各分野で大きな蓄積を得てきました。他方で、それが分野間の敷居を高くしてきた面もあります。日本政治学会は、IPSA(International Political Science Association)をはじめ、グローバルな政治学者のネットワークと密接な連携を図りながら、多様な分野を包摂する学会として、各々の分野内での研鑽とともに、分野横断的な研究交流を可能にすることで、何らかの共通の言葉、何らかの共同の場、何らかの共同体を得てきました。

 日本政治学会は、今後も、先人たちの掲げた使命を全うし、その目的を変わらず追い求めていきます。そして、日本政治学会が、多様な背景と専門分野をもつ研究者のホームグラウンドとなり、高い水準での研究の発信と交流を可能にするべく、私自身、努めて参ります。是非ともご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。