『年報政治学』2026年度第Ⅰ号特集論文公募のお知らせ

2026年度第Ⅰ号年報委員長 大庭三枝
査読委員長 五百旗頭薫

 2026年度第Ⅰ号(2026年6月刊行予定)のテーマは「リベラル国際秩序の揺らぎ」再考を予定しています。

 米中対立が激化し、ロシア・ウクライナ戦争が泥沼の様相を呈し、さらにはガザ危機を中心とした中東情勢も緊迫化している現在、欧米を中心とする既存の秩序が揺らぎを見せていることは否定できません。しかしそれは一部で議論されているような「民主主義」対「権威主義」の二項対立、あるいは西側諸国vs. 中ロといった構図では把握できない、より複雑な様相を呈しています。例えば秩序を支えていたアメリカ自身が国内における深刻な分断を抱え、対外的には内向き志向を強めるなかで、ルールに基づく秩序を棄損する行動を取っている側面も見られます。また、西側諸国内でも必ずしも足並みはそろわず、中ロの間にも微妙な立場の違いは見られますし、いわゆる「グローバル・サウス」の国々の動向はさらに複雑です。

 現在進行している秩序の揺らぎを把握するためには、まずは既存の秩序=「リベラル国際秩序」の実像を明らかにした上で、その秩序が「揺らぎ」とは具体的にどのような現象を指すのか、を検証する必要があります。その際、(1)国際政治におけるプレイヤーとして影響力を増しつつある非欧米諸国の対外戦略や国内政治状況がリベラル国際秩序の帰趨に大きく影響していること、(2)各国の国内政治・経済・社会の変動と国際秩序の変容は相互に連動する現象として捉えられること(3)既存の秩序のあり方、その揺らぎの様相ともに、問題イシュー毎に異なる様相を見せていること、というこの三つの視点を重視すべきでしょう。

 本号では、これらの問題関心や論点を踏まえつつ、「リベラル国際秩序の揺らぎ」とされている現象の再検証を試みる論考を募集いたします。国際政治学、政治学、地域研究などに関連する様々な分野、アプローチによる研究を歓迎します。投稿の締め切りは2025年9月20日となります。投稿原稿は、学会ウェブサイトに掲載されている投稿規程に則り、オンライン投稿・査読システムから投稿して下さい。