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日本政治学会若手論文優秀賞

 日本政治学会は、若手会員の研究活動を奨励し顕彰するとともに、学会を通じた研究活動をさらに活性化するため(日本政治学会若手優秀論文賞規程第1条)に、「日本政治学会若手論文優秀賞」を設けています。

受賞作

第1回(2019年)(2点)

・大庭大「事前分配(pre-distribution)とは何か ―政策指針と政治哲学的構想の検討―」(年報政治学2018-Ⅱ 掲載)

(選評)
 本論文は、近年の政策論や政治哲学において議論されている「事前分配」に関する、我が国で最初とも言える本格的な研究論文である。
 そこでは、ロールズの財産所有者デモクラシー論をその規範的根拠として位置づけ、事前分配の規範的基準と、具体的な政策論を明確化しようとしている。個々の論述は明快であり、近年までの論争を的確に整理したうえで自説を展開できている。
 具体的な政策動向と政治哲学的な議論の両方を目配りしながら論理を進めていることや、政策論でよく論じられるアクティベーションやベーシックインカムと事前分配の違いを明確化した点について、特に重要な学術的貢献を見出せるといえよう。

・松井陽征「非政治的保守主義 ―半澤孝麿とオークショットにみられる保守主義政治思想の比較考察―」(年報政治学2019-Ⅰ 掲載)

(選評)
 本論文は、半澤孝麿とマイケル・オークショットの保守主義論を手がかりに、懐疑主義的保守主義の解明を試みる独創的な取り組みである。
 著者は、懐疑主義的保守主義の系譜として、モンテーニュからパスカル、ホッブズ、そしてオークショットへといたる流れが存在することを明らかにしつつ、この系譜の思想的特質として理性のみならず伝統や慣習すらも懐疑の対象とすることを、またこの思想の背景にある動機として非政治的領域の価値を重視する非政治主義を、説得的に描き出している。さらに著者は懐疑主義的保守主義を、正しさによってではなく非政治的な価値追求にとって有用である限りにおいて秩序を尊重するものと解釈し、そこから、いかに悪しくとも秩序維持に役立つ限りすべての制度を有用とみなす、そのシニカルな実践的含意を引き出すことに成功している。
 このような保守主義思想の探究の成果とともに、それを通して政治の意義の再考を迫るという点でも本論文は意義深いものといえる。

選考委員会(大西裕(委員長)、遠藤乾、名取良太、近藤康史、鏑木政彦)